毒舌紳士に攻略されて
「……は?」

一瞬頭の中だけ、世界一周をしてしまった気分だ。
だって聞き間違いにしたって、冗談にしたって笑えない。

顔を引きつらせていると、聞こえなかったと勘違いしたのか、少しだけ距離を縮めはっきりと言ってきた。

「だから俺なんてどう?って聞いているんだけど」

はっきりとした口調でゆっくりと言われたら、今度は聞き間違いではないことは確かなこと。

「えっと……冗談、だよね?」

あり得なさすぎる話に、乾いた笑い声と共に聞いてみると坂井君は、すぐさま首を横に振った。

「俺、冗談って一番嫌いなんだよね」

「じゃっ、じゃあ何かの罰ゲームとか?」

それなら可能性大だ。
いつも会社では滅多に話し掛けてこないのが、いい証拠。
そんな私の気持ちとは裏腹に、またしても坂井君は首を横に振った。

「罰ゲームとかふざけたもの、ぜってぇやらねぇから」

「じゃっ、じゃあどうして……?」

そうだよ。
聞き間違えでも冗談でも、罰ゲームでもないのならどうしてそんなこと言うの?
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