毒舌紳士に攻略されて
可愛いインテリアの数々に、淡いピンク色のカーテン。
リビングから見えるダイニングキッチンにもまた、お母さんの趣味と思われる可愛いインテリアの数々が飾られていた。

うちのお母さんはどちらかというとシンプルを好んでおり、家の中も必要最低限のものしか置いていなくて、少しだけ寂しい。
だから子供の頃はこんな可愛らしいリビングに憧れたりしていた。

理想のリビングにしばし視線を奪われてしまっていると、お母さんはいつの間にか紅茶を淹れてくれたようで、トレーに乗せて運んできた。

「年甲斐もないでしょ?よくメルヘンチックな趣味だって言われちゃうの」

「え……あっ!いいえ!むしろ憧れですこんなリビング!!」

お世辞ではない。
つい力説してしまうと、お母さんは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。

「嬉しいな。めぐみちゃんにそう言ってもらえると」

そう言って笑うお母さんは本当に可愛らしくて、若々しい。とてもじゃないけれど坂井君のお母さんと言われない限り、信じられないかもしれない。

ローテーブルに紅茶を並べると、お母さんに「どうぞ」と言われ遠慮がちにソファーに腰掛けた。

「すみません、いただきます」

そっとカップを手に取った瞬間、大きくスプリングが軋むとドカッと隣には坂井君が腰かけてきた。
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