愛を教えてくれた君に
近づく距離

-Nico-

私は親が家を留守にしていることも、

独りぼっちなことも誰にも話したことはなかった。

それになにより友達を家に連れてきたことがない。

だってお金持ちとか思われたくない。

確かに生まれてからお金に困ったことはない。

ただ私に与えられたのはお金とこのマンション。

ただ両親は仲が悪い訳じゃない。

四六時中を共にしている。

私は生まれたから16年、親と過ごしたのは、

年数にすれば3年くらい。

あとは去年までお世話になっていた家政婦さん。

今年からは一人でも平気だと勝手に決められて、

親たちへ着いていったらしい。

あなたたちこそ2人で平気でしょって思うのは

私だけですか。

熱のことなんか忘れてどうしようもない親のことを

考えていたら2.3時間は過ぎていた。

ピンポーン〜♪

誰だろ?こんな時間に。

インターホンを見ると、山田くんが立っていた。

「おい。加藤。寝てんのか?」

「は、はい」

「聞いてるなら返事しろよ。」

「なんで…?」

「飯と薬。とりあえず開けろ。」

私は素直にエントランスホールのドアをあけた。

「部屋も解除してあるから…」

「うん」

ピロリっとドアが開く音がした。

玄関に向かおうとすると、

「いいよ。座ってろ。」

「でも…」

「いいから…」

と向 かってくる山田くんは優しかった。

山田くんは無言で私にお弁当と薬を渡してきた。

「なんで…?」

「親に見られてて。」

「なにを?」

「加藤、背負ってんの。」

「ごめん。誤解されちゃったよね。」

「あぁ~。でも事情説明したらコレ持っていけって。」

「ご、ごめん。」

山田くんからもらったお弁当は手作りみたいで、

どれも消化のいいものばかりだった。

私はまた泣いてしまった。
< 10 / 24 >

この作品をシェア

pagetop