イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「……はあ、よくわかりませんが。それより、下ろしてくれません?歩きますから」

そう主張するが、彼は下ろしてくれない。

「痛みを我慢して歩いて怪我が悪化して、明日のタンナー工場の見学行けなくなってもいいの?行きたかったら大人しくしてて」

反論できないのを知ってて言っているのだからズルイ。

 この状況は嫌だけど、タンナーの工場は行ってみたい。

仕方なくそのまま彼に抱かれて裏口を出ると、車がすでに待機していて運転手がドアを開けてくれた。

 瑠海は私の足の状態にずっと気づいていたのだろうか?

 あまりにも手際が良すぎる。

 車の中に入り靴を脱ぐとやっぱり爪先が血で濡れていて、ヒリヒリして痛かった。靴も中が血で真っ赤に染まっている。

「ごめんなさい。靴、駄目になっちゃったかも」

靴を汚したことを謝れば、彼はフッと微笑した。

「うちのサンプル品だし、気にしない」

 サンプル品ね。

 多分この人なりの気遣いだ。
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