イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 珍しく地下鉄に乗って駅を降りれば、靴はびちょびちょ、服もバケツでも被ったのかというくらい濡れている。

 濡れて体温が奪われたのか、身体がブルブルと震える。

 こんな事ならタクシーにすれば良かった。

 こんな格好じゃあ、またどうせ門前払いよね。

 インターフォンに手をやるが、押すことが出来ない。

 今日はやめておこう。

 こんな濡れ鼠では修に会う気になれない。

 踵を返して帰ろうとすると、ドンと何かにぶつかった。

 思わずよろめいて後ろに倒れそうになったところを、大きな手に抱き止められる。

「あ、ありがとうございます」

 お礼を言って顔を見上げてみればそれは修で・・・・。

「あっ・・・・」

 やだ、もう最悪。

 メイクも髪も服もメチャクチャなのに、恥ずかしい。

 カチカチと歯が鳴り悪寒までしてきた。
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