最低王子と恋の渦
――そうして館内に入り、スクリーンへと移動してきた私達。
ジュースを椅子のくぼみに置き、ワクワクと映画が始まるのを待つ。
とは言っても上映時間までまだあと少しあるなぁ。
「…中もカップルだらけだね」
「そうだね」
チラリと隣に座る三鷹くんを見上げてみる。
…私と三鷹くんも恋人同士に見られてたらどうしよう。
なんて。
と、ふと私は三鷹くんにしたかった質問を思い出す。
「そうだ三鷹くん、結局三鷹くんの好きな人って誰なの?」
「…まだ聞くのそれ?」
半ば呆れたように三鷹くんは私を見る。
…だって気になるし。
ていうか答えてくれないんだもん。
いるんだったら気になるよ。
「応援するよ?」
「…田中さんに応援されても実るものも実らない気しかしないなぁ」
「失礼な」
「そんなやすやすと他人に好きな人言ったりしないから諦めな」
ちぇー。
三鷹くんのことだから、相当な美人なのかもしれない。
いつか見てみたいなぁ。
と、三鷹くんは不意にじっと私を見つめてきた。
「えっ?」
「……」
戸惑う私を変わらず見つめ続け、三鷹くんはハァと溜息をついた。
な、何?
「ずっと言わなかったけど、田中さん目の下に睫毛付いてるよ」
「えっ!?」
言ってよ!!
めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん!
私は慌てて鞄から鏡を取り出し、睫毛を取った。
…くそ、ほんとに性格悪いな!