最低王子と恋の渦





『それでは皆さん、クリスマスツリーのイルミネーションの点灯の時刻になりました。皆さんで点灯のカウントダウンをしましょう!』








と、ここで大通り内にアナウンスが流れた。



中央広場はわあっという声が上がり、点灯を待つ人達はそわそわと笑顔を浮かべている。




私もワクワクしながら隣の三鷹くんを見上げた。










「きたきた!もう点くよ!」



「うん知ってる」



「楽しみだぁー」



「…そっか」










私が笑顔で言うと、三鷹くんも同じようにニッコリと笑ってくれた。












『それではご一緒に!…10・9・8・7…』








と、遂にカウントダウンが始まる。



周りでは結構カウントダウンを口にしている様子。










『…3・2…』



















と、









不意に三鷹くんが私の耳元に顔を近付けてきた。




















「田中さん…俺、実は明日…」





『メリークリスマス!!』















三鷹くんの言葉は見事に周りの歓声で遮られ、私の耳には届かなかった。





ぶわっとクリスマスツリーにはキラキラとイルミネーションが輝き、周りも私もその見事さに圧倒されてしまう。



少々三鷹くんの言葉の続きが気になるも、私はそんなことよりクリスマスツリーの方が重要だった。











「うわぁ!すっごい綺麗だね!」




「…そうだね、クリスマスに力入れてるね」




「やっぱクリスマスと言えばクリスマスツリーだねぇ!」




「…そう?」










私は何度も綺麗なクリスマスツリーを携帯のカメラで収めた。



去年まではこんなに大きくなかったからなぁ。












「よしっ、満足。…で、三鷹くん、さっきなんて言ってたの?」










十分クリスマスツリーを撮り終わった私はくるりと三鷹くんを見上げながら言った。



三鷹くんはいつものようにニッコリと笑っている。











「さあなんでしょう。田中さん別に気にもなってないでしょ」




「えっ、いやそんなことないよ!?」




「見てて分かるんだよカス」










か、カスって…。



ニッコリ涼しげに笑ってるけど…これもしかして怒ってるのかな?




だってクリスマスツリー綺麗だったんだもん!





< 141 / 347 >

この作品をシェア

pagetop