最低王子と恋の渦
『それでは皆さん、クリスマスツリーのイルミネーションの点灯の時刻になりました。皆さんで点灯のカウントダウンをしましょう!』
と、ここで大通り内にアナウンスが流れた。
中央広場はわあっという声が上がり、点灯を待つ人達はそわそわと笑顔を浮かべている。
私もワクワクしながら隣の三鷹くんを見上げた。
「きたきた!もう点くよ!」
「うん知ってる」
「楽しみだぁー」
「…そっか」
私が笑顔で言うと、三鷹くんも同じようにニッコリと笑ってくれた。
『それではご一緒に!…10・9・8・7…』
と、遂にカウントダウンが始まる。
周りでは結構カウントダウンを口にしている様子。
『…3・2…』
と、
不意に三鷹くんが私の耳元に顔を近付けてきた。
「田中さん…俺、実は明日…」
『メリークリスマス!!』
三鷹くんの言葉は見事に周りの歓声で遮られ、私の耳には届かなかった。
ぶわっとクリスマスツリーにはキラキラとイルミネーションが輝き、周りも私もその見事さに圧倒されてしまう。
少々三鷹くんの言葉の続きが気になるも、私はそんなことよりクリスマスツリーの方が重要だった。
「うわぁ!すっごい綺麗だね!」
「…そうだね、クリスマスに力入れてるね」
「やっぱクリスマスと言えばクリスマスツリーだねぇ!」
「…そう?」
私は何度も綺麗なクリスマスツリーを携帯のカメラで収めた。
去年まではこんなに大きくなかったからなぁ。
「よしっ、満足。…で、三鷹くん、さっきなんて言ってたの?」
十分クリスマスツリーを撮り終わった私はくるりと三鷹くんを見上げながら言った。
三鷹くんはいつものようにニッコリと笑っている。
「さあなんでしょう。田中さん別に気にもなってないでしょ」
「えっ、いやそんなことないよ!?」
「見てて分かるんだよカス」
か、カスって…。
ニッコリ涼しげに笑ってるけど…これもしかして怒ってるのかな?
だってクリスマスツリー綺麗だったんだもん!