最低王子と恋の渦
――「田中さーん!」
お昼休みのこと。
元気な声のする方を見てみると、そこにはニコニコと手を振る和久井くんがいた。
そしてスタスタとこちらに歩いて来る。
「今日田中さんお弁当?」
「え…あ、いやパン買いに行こっかなって」
「おー!じゃあ奢るよ俺っ」
忘れてた。
そういえば和久井くんは私にお礼がしたいとか言ってて、結局いつかのお昼を奢ってもらうことになってたっけ…。
菜々はきょとんとしていたけど、状況を把握するや否やにたりと笑った。
「いーじゃんいーじゃん奢ってもらいなよー。よしじゃあ皆で食堂で食べよー!」
「はっ?ちょっと菜々」
「いいよね?和久井くん」
「俺は全然いいよ!」
笑顔で返事をする和久井くんとずっとにやにやしてる菜々。
いや奢ってもらうのは仕方ないにしても、なんで三人で食堂で食べることになったのよ。
と、二人にズルズル連れ出されていたその時。
「食堂行くのか!?待って俺も混ぜてー!」
ゆ、友也!?
菜々はまたにやりと笑って「もちろん!」と快く承諾している。
…ただでさえ友也と和久井くんキャラ被ってんのに…。
なんて私の不安はお構いなしで、私達4人はぞろぞろと食堂へ向かった。