最低王子と恋の渦
――そんなことを考えていると、あっという間に友也宅に着いた。
いつものように「お邪魔しまーす」と家に上がると、おばさん、つまり友也のお母さんが優しげな笑顔で出迎えてくれた。
「いらっしゃい美乃ちゃん! 今日は恵美ちゃんにお裾分けをしようと思ってね〜!
美乃ちゃん、これ持って帰ってくれる?」
差し出されたのは、シュークリームが入った紙袋。
お菓子作りが好きなおばさんは、よくこうして我が家に作ったお菓子を分けてくれる。
これがほんとに美味しいのなんの。
ちなみに恵美ちゃんとは、私のお母さんのことである。
「ありがとうございます!」
「いえいえ〜。じゃあご飯の支度が出来るまで、リビングで珠妃と遊んでてちょうだい」
そう言っておばさんはキッチンへと戻って行った。
言われた通りにリビングへ行くと、友也と妹の珠妃ちゃんが絵本を読んでいるのが目に入る。
珠妃ちゃんはもう中学一年生だ。
「珠妃は中学生になっても絵本好きだなー」
「うん、好き。珠妃将来は絵本作家になりたいもん。漫画家でもいい!」
そんな微笑ましい兄妹を見つつ、私は思わず笑顔になった。
「あ!美乃ちゃん!」
そんな私に気付いた珠妃ちゃんは、パアッと笑顔を浮かべた。
か、可愛い…。