最低王子と恋の渦
――休み時間。
私は移動教室のためにノートや教科書を持って菜々と廊下を歩いていた。
「…あ」
ふと視線の先にいた和久井くんに目が止まる。
和久井くんはこちらに向かって歩いて来ており、私に気付いた。
すると和久井くんは一瞬ためらうように私から目線を逸らし、そして再び目を合わせた。
「…田中さんだ〜」
……あれ?
いつもの和久井くんなら、元気良く「あ、田中さん!」って手振ってくるのに。
今日はなんだか元気がないように見える。
「次移動教室なん?」
「…あ、うん」
「そっかー」
笑顔ではあるものの、やっぱりいつもの和久井じゃない。
…どうしたんだろ。