最低王子と恋の渦
「パァス!パスパス!」
「おい、あいつノーマーク!」
男子のコートの横を通っていると、試合中の男子達の掛け声がうるさく聞こえてきた。
…三鷹くん試合してるかな。
と、確認したかったけどあんまりモタモタしてると邪魔になるし、第一男子ばっかりの空間がアウェイ過ぎて居心地が悪い。
なので惜しく感じながらも私はとっとと出入口まで急ぐ。
すると突然。
「あ!危ない!」
そんな声が聞こえて、
私は「え?」っと声の方へ振り返った。
見ると、なぜか目の前にはバスケットボールがこちらに向かって飛んできていて。
やばいと思った瞬間。
――バスンッ!
私の顔面に激突したボールはそんなごつい音を立てて跳ね返る。
そして私はその勢いと共に真後ろの壁に後頭部を打ち付け、そのまま倒れた。
人間って、ほんとに顔面に強い衝撃が加わると視界がチカッとするんだな…。
と、なぜか私の頭は冷静で。
「た、田中さん!?大丈夫!?」
「おい直哉ぁ!女子怪我させてんじゃねぇぞ!」
「わ、わざとじゃないって!」
意識が薄れていく中、そんな声が聞こえてきたが、
私はそのまま気を失ってしまった。