最低王子と恋の渦
三鷹くんは家に上がると、キョロキョロと辺りを見渡した。
「病人の君が来客に応じたって事は…奥さんいないの?」
その奥さんってのなんか変な感じするからやめて欲しいんだけど。
私はゴホゴホと咳をしながら頷いた。
「…はいもう座って。後は俺がするから」
「ゲホッ…でも…」
「起きてから熱測った?」
私が首を振ると、三鷹くんはテーブルの上に置いてあった体温計を私に手渡した。
…なんかほんと優しい。
って、私はいつまで三鷹くんの優しさに驚いてるの!
「このリンゴ奥さんが切ってくれたの?」
「あ、そうそう。それ食べる」
時間が経って少し茶色くなったリンゴを一つ摘んで、私はそれを口の中へ運んだ。
美味しいや。
「俺も食べる」
そう言った三鷹くんは、私の隣のテーブル席に座った。
「…風邪伝染るよ?」
「あ、美味しい」
「(聞いてないや…)」
満足げに食べる三鷹くんの横顔を見て、私はハッと気付いた。