からくれなゐ
 それから二月(ふたつき)ぐらい経ったある夜。
 油小路で事件があった。

 浪人たちの斬り合いで、辺りは血の海と化したようだ。

 ああ、やっぱり。

 現場を見たわけではない。
 なので娘は、討ち死にしたのが誰かは知らない。

 噂はいろいろ聞くが、名を聞いたところで浪人など今の京には溢れるほどいるのだ。

 だが娘は、そのうちの一人が、あの日出会った青年であろうと思った。
 名も知らない、小柄な青年。

 何故なら彼は、あの時から紅葉と共に燃えていたから。
 燃える朱を主張する、紅葉のように。

 紅葉の朱は、命の灯。
 葉を散らす前に、最後の力を振り絞って燃えるのだ。

 紅葉が終わり、木々が葉を落とした凍てつく深夜に、青年もまた、命の灯を消してしまった。


*****終わり*****

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