シンデレラは硝子の靴を
ノックをした方が良いのかと迷い、手を宙に浮かせた所で、中村に目をやると、首を振っている。




「…まず、静かに中に入って、状況を確認なさった方が良いかと思います。」



中村はひそひそ声でそう言うと、深くお辞儀をして。




「それでは、ご健闘をお祈りしております。」




扉から数メートル離れた所で、待ちの姿勢になった。




「・・・・」




沙耶はそれをなんとも言えない気持ちで見つめてから、再び扉の取っ手に手を掛けた。



慎重に開けた為なのか、油がよく挿さっているのか、物音ひとつたたずに扉が動く。



―何、ここ。


30㎝ほど開いて、恐る恐る先を覗くと、途方も無く大きな部屋に、何サイズかすらもわからない広いベットがぽつん、とあるのが見えた。




遮光式のカーテンなのか、陽はもう出ているというのに、室内は薄暗い。


仄かな暖色系のランプが微かにシルエットをなぞっている程度だ。




―羨ましいな、遮光式。



自分の家のカーテンと比べて、沙耶は思わず苦々しい気持ちになる。



―…じゃない、そうじゃ、なかった…起こさなきゃ。




気を取り直し、足を前に踏み出した。



と。





―あ。



中に入ると、途端にふわりと鼻を掠める香りに沙耶は立ち止まった。




―アールグレイ?




紅茶の香りが、する。



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