シンデレラは硝子の靴を
「!」



必死な方の男は、声を失ったようだったが。



あれだけがやがやとしていた会場の声が、段々と潜んでいったことに気付き、沙耶は思わず振り返った。





モデルのような容姿の、スーツを着た若い男。




その足元に、額を絨毯にくっつけて土下座する、中年の男。



二人を、円を描くように取り巻き、固唾を呑んで見守るセレブ達。




沙耶の振り返った先には、そんな光景が広がっていた。





「大伴さん、何やってるんですか!!」




若い男は、急に顔色を変え、肩を震わせながら土下座する男に駆け寄る。




「そんな風に自分を低めないで。大丈夫ですよ!大伴さんならやっていける!」




そう言って、大袈裟に肩をぽんぽんと叩いた。




「!それじゃ―」



大伴と呼ばれた男は、弾かれたように頭を上げるが―




「残念ですが、我が社がお手伝いできることはありませんが。」




「!!!!そんな!!!」




若い男は人の良さそうな顔をして、綺麗に整えられた眉をハの字にした。



瞬間、沙耶の全身が粟立つ。



それが寒さや恐怖からじゃないことは、沙耶が一番よく分かっていた。




「いや、申し訳ない。」




若い男はきっぱりとそう言って、立ち上がる気力をなくした男の肩をもう一度叩く。




「それでは、私はそろそろ―」



「待ちなさいよ…!」




パシャッ




気付けば、口も手も動いていた。
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