シンデレラは硝子の靴を
ヒュッ



予想通りの、空を切るような音に沙耶は直ぐに反応する。



眩しさからか、苛立った様子の石垣の拳は、今さっきまで沙耶の顔があった位置に到達していたが、どこにもヒットしないまま宙を彷徨った。




「……あれ…」




結構な速さで動いた石垣は、そこで漸く薄く目を開く。





―確かに、気配だけでピンポイントに入り込めるなんて、相当護身術叩き込まれてるわね。




数歩横に身をかわした沙耶は、感心して思わずヒュウと口笛を鳴らした。


それによって。



「そこか」




石垣の虚ろな目が、沙耶を捕らえる。



―でも。




「うるせぇ目覚まし。」




狙いを定めた石垣が、再び沙耶に飛びかかろうとしたそれよりも数コンマ前に高く上げた沙耶の踵が。




「女に手を上げるなんて最低なんだよっ!!」



「うっ」




石垣の肩に落とされる。




―スパッツ履いてて正解だったわ。



崩れ落ちるようにしてしゃがみこんだ石垣を見つめながら、どうせなら坂月にパンツスーツを買ってもらえば良かった、と沙耶は歯噛みした。




「いってぇー…、、、って、、、あれ?」




痛む右肩を擦りながら、石垣がやっと眠りから目を覚ます。



そして焦点の合った目で、はた、と沙耶を見上げた。




「………」



ややあって。





「お前、、、俺の寝込みを襲うなんて、、、卑怯だな。」




「はあ?」



開口一番吐かれた石垣の言葉に、沙耶は憤然とした。




「あんたが起きないからでしょうが!本当だったら、あんたの脳天直撃させても良かった所を、肩トントンで済ましてあげたのに。」




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