シンデレラは硝子の靴を
もっと言うなら、力だって加減した。
「…トントン、じゃねぇだろ、これ…」
石垣は顔を顰めて俯く。
「そうでもしないと、私がやられる所だったんだから。つーか、大人なんだから自分で起きなさいよ。出勤は9時だそうですけど?!」
言いながら、携帯で時刻を確認すると、7時半になる所だった。
「うるせー。寝不足だったんだよ。もっと寝かせろ…」
肩に手を置いたまま、ふらーと立ち上がった石垣はうんざりしたように呟いて、ベットに戻ろうと脚を掛ける。
「あっ!こらっ」
そんな彼の黒のシャツを、沙耶は慌てて後ろからぐいっと引っ張った。
「………」
一瞬の沈黙。
それから直ぐに、石垣が振り返り。
「え!?うわっ」
目が合ったと思った途端。
空いていた方の手を掴まれ。
気付いたら、天井が見えた。
「ちょっと!何すん…」
ベットの上に仰向けになった沙耶は、掴まれたままの左手と、掴んでいる手の持ち主に抗議しようと睨みつけるが。
「悪かったな。」
予想していなかった言葉と。
予想していなかった石垣の表情。
それから、下ろした栗色の髪に。
不覚にも、言葉に詰まった。