シンデレラは硝子の靴を
「秋元様、素晴らしいです!」



部屋を出た所で声を掛けられ、沙耶は驚いて立ち止まった。




「中村、さん。」



見ると、部屋の中に入る前と変わらない待ちの姿勢で、中村が忠犬のように脇に立っていた。




「どのような手段を使われたのでしょう!?ご主人様はいつになく上機嫌で部屋を出て行かれました!」




興奮を隠せない様子の中村はどんどんと沙耶との距離を縮めてくる。




―ち、近い。




「かっ…」




キラキラの眼差しをぶつけてくる中村に、踵落としをしたと言ったら、卒倒するかもしれない。




「肩を、トントンって、しただけです…」




―嘘じゃ、ない。




「まぁ!マッサージですね!?早速ご主人様の起こし方マニュアルを作成致しますわ!」




たとえ、その情報で、誤りが伝えられようとも。




「え?!あ、、、え、えっと…その…私、これからあいつに付き添わなくちゃならないんで…とりあえず、、下に降りますね?!」




受け取った人間の解釈が、ちょっとズレただけだ。



沙耶は中村から逃げるように、そろそろと後ずさる。



「ああ!そうでしたわ!お時間が余りないようですものね!ご主人様はいつも朝食はこちらではお召し上がりになられないので、お召し替えが終わり次第、ロビーの方へいらっしゃるかと思います。今そちらにご案内致します。」




「はぁ…」




召し上がるのか召し替えるのか、頭がこんがらがる沙耶だったがとりあえず頷いた。





―朝から、疲れる。




早くもげっそりしながら、沙耶は結局中村の後ろを付いて行く。



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