シンデレラは硝子の靴を
「では、こちらで少々お待ち下さいませ。」
朝入ってきた扉の前に来ると、中村は一礼して姿を消す。
沙耶も軽く頭を下げて、自分の居る場所を見回した。
吹き抜けになっているロビーの天井には、大きなシャンデリア。
床はつるつるの白い大理石。
今下りて来た階段の脇にはプラントスタンドがあって、花瓶に生けられた花々が、この広いスペースに文字通り花を添えていた。
外に続く扉の両脇には、サングラスをかけたスーツ姿の男が無言で突っ立っている。
恐らく警備の人間なのだろう。
中村以外のメイド達は、といえば、忙しなく―とはいえ優雅な動きで―それぞれ仕事をしているようだが。
先日会った老紳士、もとい執事が顔を出すと、みるみるうちに階段脇に集まり始める。
最後に中村がやってきて、整列したメイド達の前に自分も立った。
そこへ。
誰かが、階段を下りてくる足音がして。
沙耶が振り返ると、スーツに着替えた石垣が、ワイシャツのカフスボタンを留めながらこちらに来る所だった。
上着は肩に掛けられている。
髪もきちんとセットされている。
―いつも通りの、嫌な感じの奴。
これから、この男と毎日こんな感じで朝会わなければならないのか。
そう考えるとほとほと嫌気が差してくる。