シンデレラは硝子の靴を
「そんな時だけ敬語かよ…」



石垣がぼそっと何か呟いたようだが、沙耶は無視して、外に出る。




「あんた、何で行くの?」



ロータリー脇に停車しているロールスロイスを一瞥して、まさかこれにまた乗る羽目になるのではと、沙耶は不安になって振り返った。



「車。」



石垣が短く答え、その後ろに鞄を抱えたメイドが付き添っている。




「まさか、それじゃないでしょうね?」




言いながら沙耶はロールスロイスを指差した。




「馬鹿か?あんなんで行くわけねーだろ、目立つ。」




石垣は馬鹿にしたように言った所で、シルバーのセダンがタイミングを合わせたかのように、ロータリーに入ってくる。




―良かった、普通…




沙耶がほっとしたのも束の間。



―じゃ、ない。



沙耶は車に詳しくはないが、目の前にあるそれが、普通じゃないこと位はわかる。


ロールスロイスよりはまだ目立たないかもしれないが、何しろ大きい。


恐らく排気量はかなりあるに違いない。



唖然とする沙耶を余所に、ロールスロイスとは別の運転手が降りてきて、後部座席のドアを開ける。





―一台に付き、一人!?



呆れを通り越して、うんざりする。



石垣は立ち尽くす沙耶に構わず、慣れた動作で中に乗り込んだ。





「あ、いい。そいつも、こっちで。」





運転手が助手席のドアに手を掛けようとすると、石垣がそれを止める。




「突っ立ってないで早く、乗れよ。」


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