シンデレラは硝子の靴を
「えっ!?あんたと隣なんてやだ。助手席に座る。」



無理無理と首を振る沙耶に、ドアを開けている運転手がおろおろし始める。



「……お前さ…」



先に中に乗り込んだ石垣が苛々したような溜め息を吐いたと同時に、その腕がにゅっと伸びてきて。



「えっっ、やだ、きゃっ!」




掴まれたかと思ったら、車の中に引きずり込まれて、たまらず沙耶はつんのめった。




直ぐにバタン、とドアが閉まる音。




思わず着いた手の平には、革の感触。




もう片手は。




「ちょっと、何するのよ!?」




石垣に引っ張られたままだ。




「…訊くけど」




勢い良く見上げた先の石垣は、冷めた目をしていた。




「お前さ、俺の何なわけ?何様のつもりなの?」



「は?!」



石垣の言葉の意味を汲み取ることが出来ない沙耶からは素っ頓狂な声が上がる。





「秘書、だよな?」




掴まれた手首がぐっと絞まって、痛み始める。


思わず顔を顰めた沙耶だが、声は出さなかった。




「お前自分の立場が全然わかってないみたいだからここではっきりしておくけど―」




石垣の視線と、沙耶の目線が、重なり合う。





「秘書は俺に絶対服従。」





この時、母と駿の顔が浮かんでなかったら―。




沙耶は迷うことなく、石垣の鼻っ柱を折っていたに違いない。







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