シンデレラは硝子の靴を
ブランドショップが立ち並ぶ街並み。

その全てが沙耶の中では価値がない。


手が届くものなど何一つない上に、必要だと思えるものだって、何もないからだ。



つまらない景色など見ていたくはないが、腹の虫が騒ぎ立つ相手よりはマシだという理由で、仕方なく沙耶は窓の外に目を向けている。


自分自身をガードするようにがっちりと腕組みをして。



ドアにへばりつくようにして。


そんな沙耶を余所に、石垣も反対の窓に頬杖を付き、どっかりと座っている。



広い車内で、二人の間にはやけにスペースがあった。



嫌な静けさが漂っている。


そんな様子をバックミラーで運転手はチラチラと不安げに見守っていた。



勿論、万が一でも気分屋の主人の機嫌を損ねることがないよう、細心の注意を払い、さりげなさを装う。






「―で?」




やがて沈黙を切り裂くかのような、低い声が響き、運転手は肩を縮ませた。



この若い社長の声は、いつだって寒気がする程冷たい。


かと言って、逆に温かい声で話しかけられても、それはそれで、いつもに増して恐怖なのだが。




「でって、なんですかっ、でって」




沙耶は相変わらずぶっきらぼうな態度で―かろうじて敬語を使用してはいるが―窓に目を向けたまま訊ねる。




「今日のスケジュールはどうなってる?」



「ぅえ?!」




―今日の、スケジュール…?!




なんだ、それ。


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