シンデレラは硝子の靴を
「それで、朝食を買いに行ってもらえると有り難いのだが。」



石垣の隣では運転手から、会社の役員だろう人間が荷物を受け取っている。



「え?あ、はい。」



何を言われるのかと構えていたのに、なんだそんなことか、と沙耶は拍子抜けした。



「一度だけしか言わないからよく覚えておきなさい。」



若干、引っかかるような言い回しだが、沙耶は頷く。



その瞬間、石垣の笑みが真っ黒になった、気がした。




「まずボンヌ・ボヌールのポン・デ・ケイジョ、アウトゥンノのカルツォーネ、ブリーズのパンツァネッラ、それから、コクスィネルコリーヌのマンデリン、何もつけずにホットで。」




―は?!




念仏のような石垣の注文に、沙耶は自分の耳を疑う。




目が点になった沙耶に気付かないのか、気付かないフリをしているのか。



石垣は自分の腕時計に目をやると、再び沙耶に笑い掛けた。





「9:30までに、お願いできるかな。」




どこまでも晴れやかな笑顔でそう言い渡し、石垣は沙耶に背を向ける。




―く、じ、、、半???



呆然と立ち尽くす沙耶はかろうじて、ポケットから自分の携帯を取り出した。




時刻は、8時50分。



店はどこにあるのか知らない。


行き帰り、待ち時間全ての時間を合わせてタイムリミットは。



正味、40分、ない。



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