シンデレラは硝子の靴を
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「おはようございます。」




認証ゲートを通って来た石垣に、先に着いていた坂月が腰を上げ挨拶する。




「おはよう。」



いつになく上機嫌な石垣に違和感を覚えつつ、続いて入ってくるだろう人物にも坂月は視線を向け―



「……あれ…」




石垣が一人だけで来た事実を知った。



「秋元さん、、どうされたんですか?今日からの筈ですけど、、もしかして怪我させたりとかしてないですよね?」




固まった坂月等気にも留めずに、石垣は鼻唄を歌っている始末。




「まさかとは思いますけど、もう見放されたんですか。難航する交渉をやっと成功させたっていうのに…」




はぁ、とこれ見よがしに盛大な溜め息を吐いた坂月。


ネクタイを緩める石垣の手がピタリと止まる。





「人聞きの悪いこと言うんじゃねーよ。あいつは今初任務中なんだ。」




にやっと笑う石垣の視線が、壁に掛けられた時計に向けられる。





「さーて。何時間掛かるかな?」




含みのある、石垣の物言いに、付き合いの長い坂月は直ぐにピンと来る。




「あっ、またっ、何か企んでるでしょう?そういうことして、次逃げられても私は知りませんよ?自分でどうにかしてくださいよ?」




心底呆れ顔の坂月は、そう言いながら、広げていたパソコンのキーボードを叩いた。




石垣は何も言わずに、社長室に向かう。




その後ろ姿をチラリと盗み見てから、坂月は、他の建物が見えない程高いこの場所の窓から、外に目をやった。






「ひと雨きそうだな。」





あんなに晴れていた筈の空が、灰色がかり始めていた。


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