シンデレラは硝子の靴を
坂月の目がパチクリと瞬いた。



「失敗…って、、大丈夫なんですか。」




坂月は益々心配そうに、沙耶を見つめる。


なんとなく気恥ずかしくなった沙耶は、掴まれた腕に目を落とした。




「大丈夫です。どうせ、私は日雇いですから。」



安心させるようにそう言って、坂月の手をやんわりと払う。




「多分、会うことはもうないと思いますけど、ちょっとだけ、お世話になりました。さよなら。」




沙耶は小さくお辞儀して、今度は駆け足で自動ドアから出て行った。



守衛に声を掛けることも無く。



坂月はそれを呆然とした顔をして見送る。






「一体、何があったんだ?」








秋が深まる、少し肌寒い夜。



沙耶はただ家に向かって走った。




―世の中にはあんな奴が居るんだ。



数分前の出来事を思い返しながら、沙耶は反吐が出そうだ、と思った。




―あんな奴、大っ嫌い。ああいう人間が一番最低。




自分とは天と地ほどに差がある相手なのだろうけれど。


だから、関係ないけれど。


あんな奴がのうのうと生きているんだから、世も末だ。






金木犀の香りがどこかから漂ってくる。



月が半分、欠けていた。

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