シンデレラは硝子の靴を
「何これ…」
アパートの駐輪場―なんてものは存在せず、実際は伸び放題の雑草が生えて誰も手を付けられない状態の空き地の一角―に自転車を停めた沙耶は、道路脇に停車している一台の黒塗りのロールスロイスに目を剥いた。
ファントムと呼ばれるその車は、中古でも安くて一千万はくだらない。
ぼろアパートの住人に、こんな高級車に乗る知り合いなんていただろうか。
しかし、運転席にも後部座席にも、人気は無い。
―つーか、でかすぎだし、邪魔だし。
沙耶はそれを冷めた目で見つめ、階段を上ろうとした。
が。
「・・・」
階段に足を掛けた所で、沙耶はぴたりと動きを止める。
沙耶の家の前に、スーツ姿の男が立っていたからだ。
しかも、二人。
沙耶はゴクリと唾を飲み込む。
―借金は、とりあえずは無い、筈だ。
父や母が隠していなければ。
百歩譲って借金取りにしても、二人は上品過ぎる気がした。
―ウチに一体何の用なのかな。
沙耶は、身動きせずに二人の背中を見つめながら、必死に頭を回転させた。
続けざまに厄介事が多過ぎる。
あの二人が運んでくるものも、見るからに良いことではなさそうだった。