シンデレラは硝子の靴を
―そんなのは嫌だ。



現実という黒に塗り潰されるのは嫌だ。


何があったって、あれが誰であろうと別にいいのだ。


再会の喜びよりも、さよならの悲しみの方が勝る。




「嫌い?」



前から燻っていた原因が、事故の時の泪の理由。


そして、今沙耶を煽って石垣に文句を捲し立てさせている感情も同じだ。





「そうよ、あんたなんか嫌いなのよ!だから、早く海に沈めるなりなんなりして仕返しを完了させてさよならさせなさいよ!」




石垣が繰り返した沙耶の言葉を、沙耶ももう一度言った。



半年、と坂月は言った。


だが、石垣が何かにつけて沙耶に優しく接する度に、苦しくなる。



どこかしらに、あの子の面影を見つけてしまう。


大嫌いなあの家と結びついたあの子の記憶は。


崩れたらいけない。



「…だったら」



そう呟いた石垣の影が沙耶を覆う。




「!!!!」




一瞬の出来事だった。




「…ふ…」



重なった唇の、合間から零れた吐息。



バッチーン!!



「なっ!!!???にっ、、、するっ…!!!!」



反射的に出た右手で、相手の頬を思い切り叩いたが、動揺し過ぎて力が思うように入らない。




「もっと、嫌いになればいい。」





無表情に近い、顔で言い放ち。


石垣は部屋を出て行った。
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