シンデレラは硝子の靴を
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ドタタタタタタタタタタタ


ガララッ



「姉ちゃん!!!!」



50メートル6秒02の足を持つ駿が、病院の廊下を駆けて沙耶の病室の扉を開けた。



「無事だったのかぁー!!姉ちゃん!!!!目覚ましたって聞いて俺今コンビニから即帰って来たよ!」



息一つ乱さずに、駿は沙耶の右手を取って目を潤ませる。


その手首には週刊漫画の入ったビニル袋がかけられていて、立ち読みしていた事実を裏付けている。




「あっ…あきっ、秋元さんっ!困り…ます!!!廊下はっ、走ってはいけませんっ!!!!」




暫くしてやっと追いついた看護師が、息絶え絶えに駿を叱るが。




「申し訳ありません…」



恥ずかしさで縮こまりながら、謝ったのは沙耶である。



「あんたって奴は…ほんとに…」



昨日無事に手術を終え、麻酔から目を覚ました沙耶は、激しい痛みに耐えつつ、処置室で一晩を過ごした。


つまり。


今は個室に戻され、痛みの余り睡眠薬を飲んで眠っていた所で。




「いやー、もしかしたら全身麻酔でそのままさよならかと思ってたけど、目覚ましてくれて良かったぜ。」




―昨日聞くべき台詞だと思うけど。



ぼんやりとしただるい身体をベットに横たえたまま、沙耶はふざけた愚弟に呆れる。




―手術の日、ちゃんと教えたと思うけど、勘違いしてるのかしら。




どうしてだろう。本気で心配してくれてはいるようなのだが、つくづく腹の立つ男である。


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