シンデレラは硝子の靴を
―あゆみが悪く言われないといいけど。




沙耶にとって、それが一番心配だった。




―あゆみにだけはとばっちりがいかないようにして、今日電話して、折角紹介してくれたのに、ミスったことを謝ろう。




そう心に決めながら、車窓から外に目をやった。




これだけの高級車に乗っているというのに、景色はいつもと何ら変わらなかった。





それから、目的地に着くまで車内は静かだった。



やがて―




「着きました」



坂月の声に、いつの間にか俯いていた沙耶が顔を上げると。




「え?」



目の前に大きな山のように立ちはだかる、超高層ビルに、沙耶は目をぱちくりさせた。



当然のごとく、ミュアンホテルに行くものだと思っていたからだ。



呆然としている沙耶を余所に、運転手は立ち上がって、後部座席のドアを開ける。




「え、あ、いや…その…」




しどろもどろになっている沙耶を、運転手の背後から、先に降りた坂月が覗く。




「どうかされましたか。」




―お、落ち着け。



沙耶は自分にそう言い聞かせて、車を降りた。
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