シンデレラは硝子の靴を
石垣のことだ。

単なる嫌がらせに過ぎないのだろう。



―あいつはあんなの日常茶飯事なんだろうけど…



ぎゅっと目を瞑れば、自然と浮かぶ石垣の顔。



―こちとら免疫ついてないんだっつーの!



驚いて目を見張っていた自分を、石垣はじっと見ていた。

沙耶の阿呆面を見てさぞかし笑えたに違いない。



―悔しい悔しい悔しい。



今頃、笑い話の種にされているのだろう。




ごしごしと何度も擦った唇は、ついに切れてひりひりするわで沙耶に良いことなんて何一つありはしない。


退院まではあと三日。

あとは自宅療養に入る。

リハビリなんかで通院は余儀なくされるが、仕事復帰はその前にするつもりだ。



となると、石垣と顔を合わせる迄にあと二週間程。




「何事もなかったかのようにふるまってやるんだから…」



相手に動揺を見抜かれてはいけない。


あんなのは、事故だ。



―気にしない、気にしない。



痛みに冷や汗をかきながら。


沙耶は必死に自分に言い聞かせる。



―気にしたら、負けだ。


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