シンデレラは硝子の靴を
静かな足音は、沙耶の直ぐ傍まで来て、ベット脇の椅子に腰を下ろす。



―な、なんか、見られてる…気がする。



自然な寝顔を取り繕いつつ、沙耶は相手の視線を感じていた。



ふわりと動かされた空気に微かに香る―金木犀。




「寝てるのか?」



掠れるような、小さな声に、沙耶の心臓は締め付けられる。



相手からふー、と小さく溜め息が零れ落ちる。



「どうすればいい?」




どこか、痛い場所でもあるのかという程。




「俺、どうしたらいい?」





いつものとはかけ離れた、悲しげな声。



―な、なにコイツ…。何をこんなに問いかけてくんの?私が起きてるのバレてんのかしら。どうもしなくていいって答えるべきなのかな。



内心沙耶は戸惑いながら、冷や汗をかいていた。


だが。


「お前はもう…忘れたの?」



次の問いかけに、頭が真っ白になった。



「約束」




金木犀の香りが、強くなった気がした。


閉じた目の前を、赤と黄色の枯れ葉が覆う。



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