シンデレラは硝子の靴を
納得のいく理由だったせいか、それ以上の追求を石垣はせず。
やがて立ち上がると。
「サンキュ。」
まるで自分の仕事を肩代わりしてもらったかのような態度で、礼なんていうから面食らった。
いや、ムカついた。
「―雨、降ってますよ。」
部屋を出て行こうとする石垣の背に、坂月は声を掛ける。
これから石垣がどこへ行こうとしているのかは、一目瞭然だった。
「知ってる。窓から見えた。」
石垣の言葉に、ふと視線を外へと向ければ、硝子に付いた滴が、照明に反射し、きらりと輝きながら流れていく。
次に目を戻した時には、既に遅く。
石垣は姿を消していた。
「俺…今、何を―」
後に残された坂月は、自分が言い掛けた言葉に。
石垣に投げつけたかった言葉に、気付き戸惑う。
「やばいな―」
服に付いてしまった香りに、咽(むせ)そうになった。
危うく滑り落ちてしまいそうだった感情をやっとのことで飲み込みながら、坂月は悟る。
限界はそう遠くないことを。