シンデレラは硝子の靴を
病院から歩いていける距離にあるコンビニといったらひとつしかない。


立ち止まっていた沙耶に追いつくのは簡単だったかもしれない。



だが、問題はそこじゃない。




「わ、、わざわざ連絡ないことを怒りにここまで来たんですか?」



どうして、石垣がこの場に居るのかが問題なのだ。




「そうじゃない。どうしてるか、心配になって。」






しっとりと降る雨は、既に冬の冷たさを含んでいて、石垣と沙耶の間に落ちる。


少し空いた距離は、一向に縮まらない。


お互い離れたまま、相手の目を見つめた。


それぞれ、相手の真意を掴むために、必死に目を凝らす。






「な、に、それ…あ、しゃ、社長に関係ないじゃないですか。」





あんた、と言いそうになった言葉をぐっと飲み込み、目を逸らした。



逸らした先には、濡れたアスファルトが映る。



石垣に対する言葉遣いは、ここの所ずっと改めている。


ついついくだけてしまう自分の話し方は封印して、徹底的に距離を置こうと思った。




―なのに、なんで。



「嫌えば良いって言ったじゃないですか!?なのに、なんで心配とかするんですか?!別に構わないでしょ?放っておいてください!」




「俺がお前を嫌うとは言ってない。」




「!」




沙耶の中の何かが、音をたててぷっつりと切れる。





―構わないで。





「―わ、私はあんたが嫌いなの!!!大っ嫌いなの!!!!だから、あんたは苛めぬけば良いのよ!!!!私がどうなろうと知ったこっちゃないって態度でずっといてよ!!!!!!」




―私に、構わないで。



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