シンデレラは硝子の靴を
「お前が嫌いなのは、本当に俺なの?それとも、こっちの世界の人間か?」
暗闇と、沈黙の後に、静かに近づいた声は、沙耶に判断を任せた。
「何言って…」
何を訊かれたのかがわからず、沙耶は石垣を見上げた。
その視線は真っ直ぐ沙耶に注がれている。
「もしも俺が金持ちじゃなかったら?社長じゃなかったら?」
「どういう…」
「もしもあのパーティーで会っていなかったら。もしも再会した俺がフツウの人間だったらどうだったんだよ?」
再会、の言葉に沙耶は反応した。
「何の事言ってるんだか、全然わかんな…」
「ふざけんなよ」
「っ」
首を振って返答を拒む沙耶を、石垣がきつく抱き締める。
二人の持つ傘が、水溜りに落ちた。
「放してっ、くるし―」
沙耶が手で強く押し返してみても、石垣の身体はびくともしない。
「お前がされてきたことを、俺に重ねるな。」
低く囁かれた言葉は、沙耶の心を刺し通す。
金持ちなんか、大っ嫌い。
金に屈するのは、あいつらに屈するのと同じ。
金持ちは皆一緒。
だから、石垣も大っ嫌い。
坂月さんも同じ。
他人は信用ならない。
だって、誰も守ってくれなかった。
世界の不平等の天秤は、弱者に対して傾く。