シンデレラは硝子の靴を
「それに対して、私は逆の方法を取っていた。間違ってもこっちを選んだりしないように。言うなれば、靴を―隠していました。貴女の記憶が諒だけを思い出せれば良いとそう望んで。」



「意味がよく―」



「私が気付いた時には遅かった。でも知りたかった。貴女が本当にあの時のあの女の子なのかどうか―だからつい弟さんに尋ねてしまったんです。昔呼ばれていた名前を―」



坂月と視線はずっと絡んでいるのに、気持ちが見えない、通じない。




「あの、意味がわかりません…」



沙耶の声が震えているのを感じ、坂月ははっと我に返る。

続いて自身を落ち着ける為、ゆっくりと息を吐いた。



「これはきっと私だけが知ってる事実ですが…」



沈黙の後、坂月は呟くように話し出した。


言ってしまっていいものかどうか、迷う思いすら、もう持ち合わせていなかった。




「硝子の靴は、二つ在るということです。」




「え―?」





時間が止まったような気がした。






「こう考えたことはないですか?」





いや、空気の流れが固まったような。





「あの時貴女が出逢っていた少年は、一人じゃなくて二人だった、と。」




折角温まった身体が、真ん中から冷えていく。







坂月の目が真っ直ぐに沙耶を捕らえる。




切なそうな、どこか痛むような顔で。



それは、いつかの石垣と重なった。



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