シンデレラは硝子の靴を
諒の真剣な目つきと予想していなかった問いかけに、孝一はきょとんとした。




「―嫌がる?」




仕舞いこんだノートパソコンの上に肘を着きながら、訊き返す。




「そう、、なんか、その…偏見とか、なかったのかよ。」



諒が言いにくそうに呟けば、うーん、と孝一が顎に手を当てた。




「まぁ…好きではない、だろうけど。嫌がりはしなかったな。色々あったけどね。―何、諒、嫌がられてるの?」



「ばっ、そんなんじゃねぇよ!」



慌てて否定しても、図星にしか見えない。




「要は気持ちの問題じゃない?」




孝一が見上げると、その場に突っ立ったままの諒が説明を求めるように見返してきた。




「そんなのどうでも良くなるくらい、求め合えるのかどうか。」




諒は、そんなの分かっている、と思う。



でも。




「それ以前の問題なんだよな」



あの子は振り向いてくれない。




「あの秘書でしょ?」




項垂れる諒に、孝一はにやにやしながら訊ねる。




「―俺さ、昔も今も、大っ嫌いって言われてるんだよ。」



「はぁ?」





質問には答えずに、孝一の後ろに広がる夜景に目をやった。



あの頃も、今も。



自分は本当に、成長がない。


近づき方を間違えて。


折角掴まえたと思っても、するりと逃げられてしまう。


縮めたと思った距離は、実は少しも近づいていない。




「ひとつ訊くけど」




夜景から声の主にピントを合わせると、孝一がやけに真剣な顔で見つめていた。




「諒はその子の為に、全てを失う覚悟ってあるの?」


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