シンデレラは硝子の靴を
沙耶の緊張の糸なんかぷつんと切れてどこかへ行ってしまい、代わりに胸焼けするようなむかつきを覚えた。
「…どういうことだ、坂月。」
低い声で男は沙耶の隣に視線を移す。
「申し訳ありません、社長。少々説明不足な所がありまして…」
「社長!?」
沙耶は恐縮する坂月の言葉に耳を疑う。
「違いますよ!この人、こないだのパーティーで弱い者苛めしてたどこぞの…「秋元さん」」
坂月は苦笑しながら、少し窘(たしな)めるように沙耶の名前を呼んだ。
「私の言葉が足らず申し訳ありませんでした。貴女に用事があり、呼びにいかせたのは、彼、つまり石垣諒(いしがきりょう)なんです。」
「いし、がき…」
沙耶は今しがた聞いた事を反芻するように呟き、最近どこかで見かけたような気がする、と記憶を探った。
そして、あっと息を呑んだ。
沙耶の反応を見て、坂月は頷く。
「そうなんです。あの日は、石垣グループの新しい社長就任の披露パーティーだったんです。」
自分でも顔から血の気が退いていくのがわかった。
もしかして、という気持ちが先走っている。
そんな沙耶を知ってか知らずか、坂月は淡々と続けた。
「そこで新しく若手社長として就任したのが―」
そこまで言うと、坂月は机の上で不機嫌そうにこちらを見ている男に片手を向ける。
「石垣諒、です。」