シンデレラは硝子の靴を
「やっと会えて、嬉しいよ。」
―私はこれっぽっちも嬉しくない!
沙耶はキッと睨みつけるも、石垣は全く臆さない。
「お前さ、天下の石垣の晴れ舞台に命知らずなことやったんだよね。」
先日のパーティーよりも、ずっと砕けた物言いに沙耶はカチンと来る。
冷ややかな、氷みたいな声だと思った。
けれど、石垣はどこか楽しそうな笑みを浮かべている。
「あんな屈辱的なこと、俺初めて。大体ワインで台無しにしてくれたあのスーツ、幾らすると思ってんの?」
そこまで言うと、石垣は立ち上がった。
床から、コツ、コツと靴音が響く。
ゆっくりと。
そして―
沙耶の目の前でピタリ、止まった。
間近で見る石垣は高圧的で、背も高い。
「弁償できる?百万。」
見下すように言われ、沙耶は向っ腹が立って仕方ない。
「っ、「できないよなぁ?」」
口を開きかけた所で、男の笑いが不敵になった。
「今、無職、だろ?」
「!!!!」
一瞬、何でこの男がそれを知っているんだと頭が真っ白になるが。
「…あんたの仕業ね…」
不自然な解雇通告の根源が直ぐに理解できた。