シンデレラは硝子の靴を

「やっと会えて、嬉しいよ。」




―私はこれっぽっちも嬉しくない!



沙耶はキッと睨みつけるも、石垣は全く臆さない。



「お前さ、天下の石垣の晴れ舞台に命知らずなことやったんだよね。」




先日のパーティーよりも、ずっと砕けた物言いに沙耶はカチンと来る。



冷ややかな、氷みたいな声だと思った。



けれど、石垣はどこか楽しそうな笑みを浮かべている。




「あんな屈辱的なこと、俺初めて。大体ワインで台無しにしてくれたあのスーツ、幾らすると思ってんの?」




そこまで言うと、石垣は立ち上がった。



床から、コツ、コツと靴音が響く。



ゆっくりと。





そして―




沙耶の目の前でピタリ、止まった。


間近で見る石垣は高圧的で、背も高い。




「弁償できる?百万。」




見下すように言われ、沙耶は向っ腹が立って仕方ない。




「っ、「できないよなぁ?」」



口を開きかけた所で、男の笑いが不敵になった。




「今、無職、だろ?」



「!!!!」




一瞬、何でこの男がそれを知っているんだと頭が真っ白になるが。




「…あんたの仕業ね…」




不自然な解雇通告の根源が直ぐに理解できた。
< 35 / 416 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop