シンデレラは硝子の靴を
なのに。
「段々記憶が混同するようになった母が、俺を見て、言うんです。」
―『あなたは家の人間じゃありません。あなたは私の子じゃない。』
近づこうとする坂月に、母は怯えたように首を振って逃げてしまう。
「最初は、俺の事、忘れちゃったんだろうなと思って、一生懸命言い聞かせてたけど…」
その後、人が変わった様に攻撃的になった母の言葉は、日に日にヒートアップしていった。
―『あなただって思ってるでしょう!?分かってる癖に知らないフリをして!あなたはこの家の人間じゃないっ!出て行きなさいっ!!!早く出て行け!!!』
声を荒げ、肩で息をし、物を手当たり次第に投げつける母に、成す術がなかった。
やがて。
―母は本当に、、忘れてしまっただけなのか。
そんな疑念が、自分の中にふと生まれる。
もしかしたら、混濁した記憶の狭間に見える真実を言っているのかもしれない。
そうだとしたら、自分は一体―
小さい頃からうっすらと感じていた孤独感。
ひやりとした冷たい魔物が、息を吹き返したのを感じた。
そんな時だった。
遺言状の検認の為に取り寄せた全員の戸籍謄本を、母が持ち出してきて、目の前に広げたのは。
保たれていた均衡が、崩れた瞬間だった。