シンデレラは硝子の靴を
沙耶は、そんな坂月から視線を外し、俯く。



「諒はその事実を知らないで、ただ真っ直ぐに、貴女との約束を追いかけていた。俺は―いつしかその諒を引き摺り下ろす事だけに執着するようになりました。」




諒が悪い訳じゃない。


でも、自分が悪い訳でもない。


余りに理不尽過ぎる分かれ道は、二人が目指すものをも変えていく。


温かな約束に、影を落として。




「それで―」





沙耶は、憂いを帯びた瞳を、坂月に向けた。




「石垣から地位を奪ったら…それで、坂月さんの傷は少しは癒えるの―?」




真っ直ぐすぎる痛い質問に、坂月の視線が揺らぐ。



―わかってる。



「―結果として、俺は賭けに負けたのかな。貴女が諒に行かずに、俺を選んでくれたら、と、欲張った甘い考えを途中から持ってしまって、自己嫌悪に陥って…」



今更そんなことしても、癒える傷なんかじゃないってことは。




「でも、戻る道は、消えてしまってるんです。」



佐伯が自分を利用している事を知りながら。


助けてもらっていると騙されてるふりをして、石垣家の溝を深めるのに加担したのは、自分だった。



今更手を退く事は許されない。



バシャン



「!」





細かい氷と一緒に、水が顔に掛かる。




「目を覚ましてください。」




反射的に瞑った目を開くと、立ち上がった沙耶の手には空のコップが握られていた。

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