「幽霊なんて怖くないッ!!」
「……薄暮……何故ッ……!!」
「僕は死なないよ。 お前を倒すまではね」
「くっ……」
私とカゲロウの間に割って入った薄暮さんは、カゲロウの拳を片手で防ぎながら、もう片方の手で攻撃を仕掛けた。
薄暮さんの手にいつもの小刀は無い。
だけど後方へと下がったカゲロウの頬には刃物で切ったような跡が残されていた。
薄暮さんの手に纏わせた気が、刃物のように鋭いものとなっている……?
「……薄暮さんっ!!」
「街に残るように言っただろう?」
「うっ……ご、ごめんなさい……」
「まったく、キミは……と言うかキミたちは、本当に世話の焼ける人たちだ」
……何もこんな時に説教しなくても……。
と思いながらも、口には出さずに斜め前に居る彼の横顔を見つめた。
……薄暮さんは、笑ってる。
視線の先ではカゲロウを捉えているけれど、それでも彼は、優しい笑みを浮かべていた。
「杏さん、雨音さん、氷雨くん。 全力でユキさんを守ってください。 ここは僕が引き受ける」
その言葉ののち、戦いが始まった。
……二人の動きはとても速い。
木の上、小屋だったモノの上、そして空中。
二人の動きに合わせて風が吹き荒れ、地が揺れる。
目で追おうとしても とても追いきれない速さだ。
だから私たちは風が吹く場所へと視線を動かしながら、ユキさんを囲んで立ち尽くすしか無かった。
「ちょっと氷雨っ、今どうなってるのっ……!?」
「全然わかんねー!!」
風が吹いた場所を見るけれど、二人は既に移動したあとだ。
普通の人間では出来ない、超人技……。
『不老不死』対『不老不死』の戦いだ。
「どっちが優勢よ!?」
「だからわかんねーって!!」
「杏ちゃん、わかるっ!?」
興奮気味の雨音さんの声に首を目一杯 横に振る。
……こんなの見える方がどうかしている。
カゲロウの使い魔だったイツキさんなら見えるのかもしれないけれど、彼はもうココには居ないから、私たちはただ決着がつくのを待つだけ……。
「……薄暮さんが優勢です」
「え?」
「私には見えています。 陽炎は、防戦一方となっています」
そう言ったのは、私たち3人に囲われたユキさんだった。