「幽霊なんて怖くないッ!!」
「……薄暮さんの攻撃はとても鋭いです。 一瞬でも反応が遅れれば、その瞬間に心臓は貫かれる……そういう戦いをしています」
あちらこちらへと視線を動かすユキさんには、本当に二人の戦いが見えているらしい。
「陽炎……」
ポロポロと涙をこぼしながら、ユキさんは口元を手で覆う。
……カゲロウは多くの命を奪ってきた残忍な人だ。 でも、ユキさんにとっては300年間一緒に過ごしてきた人……。
……彼女が愛してる、唯一の人……。
「……あの人は、イツキさんのように思うことは出来ないのかな?」
生と死を受け入れて、精一杯に今を生きる……。
それがどんなに素晴らしいことか、あの人にはわからないのかな……?
「……ユキさんは こんなに悲しんでるよ……? なのにあの人は……カゲロウは、どうしてわかってくれないの……?」
想いが交わることは、無いの……?
「あっ……!!」
──ユキさんの短い叫びの直後、ドカーン!! という大きな音と共に、『何か』が降ってきた。
「陽炎ッ!!」
「あっ、ダメッ……!! ユキさんっ……!!」
私たちの囲いの僅かな隙間から、ユキさんが『何か』へと駆け出す。
その『何か』は、間違いなくカゲロウ……。
カゲロウとユキさんを近づけさせちゃいけない。
そうわかっているのに、彼女を止めることが出来なかった。