強がりウサギの不器用な恋
「俺、ジャーナリストになりたかったんだ。」
ビールを煽りながら、突然海藤さんがポツリと言葉を零す。
「英語はそのために、学生の頃から勉強してた。
って言っても、日常会話くらいしか喋れないけどな。」
「いえ、十分ですよ。発音なんて完璧です。
……そうですか、ジャーナリストですか。」
「ああ。昔はそういう夢があった。
海外に取材に行って、自分の見たものを自分の言葉で伝えたいって。」
昔を懐かしむように、ふわりと笑った男の顔が酷く優しい。
「出版社に就職したんだけどな……
希望の部署には就かせてもらえず、興味のない仕事ばかりやらされて。
そこがまた、海外取材なんてのとは随分かけ離れた部署で。
俺も若かったからさ、それならいっそ辞めて、個人で動こうと思ったわけ。
でも、そんなに世の中甘くないっつーの。」