【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
大和撫子のような上品な女性を立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と例えられるけど、歩いてくる女性は確かに、美しく凛と咲く花に例えられそうな雰囲気だった。
「今日は、ご参加ありがとうございます。佐和子さん」
私より先に、デイビットさんが話しかけた。
その名前で、私は漸く記憶の片隅からこの女性の姿を発見できた。
父の師匠である書道家の先生は、頑固な方で弟子なんて取らないと言っていた。
その先生が生涯、たった二人のお弟子さんだけは取ったのだ。
父とこの佐和子さんを。
日本で3人しか貰えない有名な賞を国から頂いていた先生。
その弟子である父と佐和子さんは確かに有名だったけど。
「ふふ。思い出したのね? 美一さんが亡くなられてから、貴方も書道を辞められて心配していたのよ」
「すいません」
佐和子さんの笑顔を見たら、瞬時に墨の匂いや研ぐ音、筆を握る感触が思い出され、胸が締めつけられた。
その思い出の中心には、必ず父の存在があるから。
「デイビットに会えたってことは、美一君の賭けは負けかしら?」