【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
――賭け?
首を傾げつつ佐和子さんの顔を見ると、デイビットさんは長い人差し指で口元を隠し、笑う。
「まだ、です。今、頑張ってるのでまだ内緒ですよ」
クスクスと笑うデイビットさんを、佐和子さんは暖かい眼差しで見つめた。
そして、私を見てウインクする。
「貴方さえ良ければ、――私、ここの近くで書道教室やっているからいらっしゃいな。私も弟子なんて生意気なもの、取らないから、遊びにだけでも」
名刺を差し出してきたので、受け取る。それ以上は、踏み込んだ話は出来なかった。
でも、舞を辞めて空っぽになった時間を埋められるなら良いことかもしれない。
二人は談笑を始め、私も笑顔で聞いては居たものの、話に入っていけずにお酒をちびちび飲む。はたしてこの苦い飲みモノを美味しいと思う日が来るのか。
デイビットさんは赤いワインとか似合いそうだし香りまで楽しみそうだけど。
ちらちら周りを見渡すと、スーツの男性に私みたいなワンピースの女性が多い。
佐和子さんみたいに着物の人は人目を惹くようで視線が痛い。
良かった。このワンピースで。
綺麗で、――着られて私も嬉しい。