君と、優しくて愛しい日々を。


…確かに、試合のあったその日とは言ってなかったし。

今日じゃないのかもしれない、だったら緊張する必要はないんじゃないのか。


そう考え、私はいつも通りに振る舞うことにした。


「あ、足...大丈夫なの?」

「うん。試合のあと、すぐ手当てしてもらったし。ちょっと痛むくらいだから、大丈夫だよ」

...よかった。

私がホッとしたのを見て、コウは目を細める。

その瞳に気づかないフリをして、私は前を向いた。


それからは、またいつものように他愛のない話をして、私の家まで帰る。

けど、やっぱり私が「バイバイ」というと、手を掴まれた。

ドキ、として、コウを見つめる。

彼の顔は、心なしかいつもより赤い気がした。


「……まだ、してない」


そう言って、拗ねた顔して。

…だめだな、私。

この顔に、弱い。


「………ん。…いいよ」


向き直って、コウを見つめて。

緊張する手のひらを、ぎゅ、と握りしめる。

見上げると、甘い瞳とぶつかった。



「…目ぇ、閉じて?」



ああ、死んでしまいそう。

握りしめた手が、震える。

そっと頬に手を添えられると、あの日よりもずっとドキドキした。

恥ずかしい、無理、恥ずかしい、死ぬ。


そう思うのに、こんな感覚も、悪くないかもしれない、とも思う。

へんな、私。

コウと付き合ってからの私は、とことんおかしい。

けど、そんな私も嫌いじゃない、なんて思ったりして。




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