君と、優しくて愛しい日々を。
「やっぱちょっとは、無理するよ」
コウは私を見つめて、ニヤっと笑って。
「約束、したもんね?」
*
事の発端は、四日前。
いつも通り、部活が終わってふたりで帰って。
他愛のない話をしながら、私の家の前まで来たとき。
私が『バイバイ』と言うと、コウは何故かムッとした顔をして、私の手を掴んだ。
そして、名残惜しそうに私を見つめて、言った。
『…ちょっと、待って』
コウはそっと私の頬に手を添え、顔を傾けてー…………
『………麻佑。なにこの手』
コウの唇が、私のそれに触れる直前。
私は彼の口元を、自分の両手で塞いだのだ。
当然コウは、不満そうに眉を寄せている。
…うう。
だっ…だって、さぁ。
『……いや、なんかこう、心の準備?ができてなかったっていうか…』
『それ、前も聞いたけど?』
『うええ、そうだけどさぁ〜』
そう、そうなのだ。
実は三ヶ月経っても、私達はキスのひとつもできていなかった。
原因は、私。
私がこうやって、直前に拒んでしまうから。