君と、優しくて愛しい日々を。


私が手を離すと、コウは不機嫌そうに目をそらして、『麻佑はさぁ』と言った。



『俺とすんの、嫌なの?』



…かぁ、と顔が熱くなる。

…する、とか、しない、とか。

コウとそんな話をする日がくるなんて、三ヶ月前の私は想像すらしていなかっただろう。


『…嫌、じゃ、ないけど』

『じゃあ、何?俺はどうやったら麻佑とキスできるの?』


なんでこいつは、こうも恥ずかし気なくそんなことが言えるのか。

じっと私を見つめてくるコウに、私は視線を合わせられなかった。


『……どうやったら、っていうか……』


そんなの、わからない。

もちろん嫌なわけではないし、付き合っているのだから、いずれするものだとも思っていた。

けど。


『……恥ずかしすぎて、無理』

『…は?』


さっき、コウが顔を近づけてくる瞬間だけでも、心のなかは大変なことになっていたのに。

これ以上のことをしたら、今度こそ死ぬかもしれない。

動悸が激しすぎて、病院送りになったらどうする。

死亡原因がキスだなんて、一家の恥だ。絶対に嫌だ。



< 7 / 86 >

この作品をシェア

pagetop