君と、優しくて愛しい日々を。
私が手を離すと、コウは不機嫌そうに目をそらして、『麻佑はさぁ』と言った。
『俺とすんの、嫌なの?』
…かぁ、と顔が熱くなる。
…する、とか、しない、とか。
コウとそんな話をする日がくるなんて、三ヶ月前の私は想像すらしていなかっただろう。
『…嫌、じゃ、ないけど』
『じゃあ、何?俺はどうやったら麻佑とキスできるの?』
なんでこいつは、こうも恥ずかし気なくそんなことが言えるのか。
じっと私を見つめてくるコウに、私は視線を合わせられなかった。
『……どうやったら、っていうか……』
そんなの、わからない。
もちろん嫌なわけではないし、付き合っているのだから、いずれするものだとも思っていた。
けど。
『……恥ずかしすぎて、無理』
『…は?』
さっき、コウが顔を近づけてくる瞬間だけでも、心のなかは大変なことになっていたのに。
これ以上のことをしたら、今度こそ死ぬかもしれない。
動悸が激しすぎて、病院送りになったらどうする。
死亡原因がキスだなんて、一家の恥だ。絶対に嫌だ。