切れない鎖

一瞬の間に笑いを抑えた校長が低い声で呟く。

(守らなきゃ。あの子を守らなきゃ!)

「ここにユルサルはいませんよ!家を見たならもういいでしょう。お帰りください」

優輝は校長を睨みつける。

校長も優輝を睨み返す。

「生意気な小僧が……」

どれくらい睨み合っただろうか。

校長が目を逸らした。

優輝は、校長が諦めたのかと思った。

しかし、校長は優輝の奥、家の中を見ている。

どうしたものかと優輝も後ろを振り返った。

すると、

「ユルサル……!」

そこには、ユルサルが立っていた。

「だめだよユルサル!どうして出てきたんだ!」

優輝は叫ぶ。

「もういいのだ。一条」

ユルサルが、小さな声を出した。
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