切れない鎖

「私はここから動かない。いや、動けない。私に関わっても、私を知っても、君に何の利益もない。だから、戻れ」

少女はドレスから指を離すと、もう一度重い扉を指差した。

「そんなの、そんな鎖を見たら戻れないよ!」

優輝は大きな声を出してしまった。

少女は驚いたのか、カシャリと音を立てて一歩後ずさる。

「君は、ここに閉じ込められているの?」

「君には、関係ない」

「君じゃないよ。一条優輝だ」

「いち、じょう?」

少女は上目遣いでこちらを見た。

「僕が、君を助けることは出来ないの?」

優輝は何故か、この少女を助けなくてはと思った。

小さく、細く、心細そうな少女を。

ガタン_________。

その時、大きな音がした。

「エレベーター?暗証番号を知っている人かな」

少女を見ると、少女は無表情で立っていた。
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